水曜日

copipe

“ 凄い時代に生きているな、とは思う。たとえば懐中時計の最高傑作と謳われる「マリー・アントワネット」なんてのは、当代一の時計職人が王妃ただひとりのために心血を注いで作り上げた世界最高にして唯一の懐中時計である。マリー・アントワネットの時代というのはフランス革命の前夜であり産業革命の前夜であり、その時代において王の権力というのはそうしたものであった。翻って現代、たとえイギリス女王であろうとウォークマンを特注することはすまいし、できまい。王族は王族の服を着て王族の食事を取り王族の家に住み王族の家具に囲まれて王族の享楽を愉しむが、しかしぼくたちは王族と同じ工業製品を使っている。革命は成った。そしてその革命を連れてきたのはロベスピエールでもなく毛沢東でもなく、「自由闊達にして愉快なる理想工場」に代表されるエンジニアの楽天精神であった。だからソ連人がレーニンの息子であり中国人が孫文の息子であるのと同じように、僕は井深大に代表される無数のエンジニアたちの息子である。”

- 父に - 春巻たべた (via ginzuna)