月曜日

copipe

kennak:

“本当に買わないドイツ人 ドイツに住んでから、物欲という物欲がまったく刺激されなくなった。 iPhoneなんて高いだけ。10年前の電子レンジも動くから問題なし。このレコードプレーヤー、おじいちゃんの代からずっと使ってるの。かっこいいでしょ。ファッショントレンド? なにそれ。見て、このコート、半額だったの! レストランで食べ残せば、「捨てるのはもったいないから持って帰って家で食べて」と言われ、友人や家族同士でモノを譲りあうこともしばしば。いらないものをダンボールに入れて「ご自由にどうぞ」と道端に置いておけば、あっという間に空になる。 留学中、学生寮に住んでいたとき、ドアノブに玉ねぎとジャガイモが入った袋がかかっていたことがある。「クリスマスで帰省するから食べて!」と知らない人の名前が書いてあり、「ちょっと気持ち悪い……」と友人に言ったら、「じゃあ俺が食べるからちょうだい」と言われた。 ドイツでは一事が万事、こんな感じである。 廃品回収車はいらない? 一番驚いたのは、去年の引っ越しのときだ。 1年に1回無料で廃品回収車を呼べるので、後日回収してもらうおうと2階の家とエントランスを行ったり来たりして家具の残骸を家の前に放り投げていたときのこと。さっき捨てた1000円ちょっとのIKEAのテーブル(ずっと使わず放置していたのでかなり汚い)を持ち帰るご近所さんに遭遇した。 汚いままだったので「あ、それ、わたしの……」とやや気まずく言うと、彼は「ちょうどテーブルほしかったんだよね。ありがとう」と満面の笑みを返してくれた。 回収車の予約の際「ほかの人が便乗して家具を置いているかもしれないけれど、あなたのものしか回収しないからわかりやすくまとめておいてくれ」と言われたので、回収日の前日、前住んでいた家に行った。すると…… なんと、家具の残骸がなくなっていたのだ! 本棚の板はたわんでいたし、ワードローブは力任せに解体して金具が折れてるし、そもそもドロドロの芝生の上に置いて雨ざらしになっていた家具の残骸、もはやゴミなのに。それを、だれかが持ち帰ったのだ! 「いやドイツ人、どんだけ物捨てたがらないの……?」 ちょっと引いた。日本だと引越しの際はずらりと(そして几帳面に)粗大ゴミが並べられていることを考えると、ずいぶん様子がちがう。 ケチというより「足るを知る」 「まだ動く」 「修理すれば使える」 「この機能で十分」 「捨てるくらいなら譲るべき」 「そんな高いもの必要ない」 こういった価値観のせいで、「ケチ」や「倹約家」と言われることが多いドイツ人。無駄な消費を好まないという意味では、たしかにそうだ。 ただわたしは、消費をあまり好まないこの姿勢に、「ケチ」というよりはむしろ「愛着」を感じている。自分が使ったものをゴミにしたくない。せっかくならだれかに使ってほしい。そういう気持ちだ。 結果的にケチであっても、どちらかというと「大切にしている」とか「足るを知る」というほうが、しっくりくる。 そんな国で生活しているので、おかげさまで消費意欲というものがすっかりなくなった。スマホはSONYの型遅れの機種で、その前は彼のお古。それに月250MBのプリペイドをチャージして使っている。友だちから服をもらったこともあるし、あげたこともある。服は着れればよし。靴は水が入ってこなきゃよし。家電は動けばよし。椅子は座れればよし。 そんな生活なものだから、日本で生活するよりも全然お金が減らない。モノを買う必要がないのだ。事実ドイツ人も、貯蓄が好きな国民性で知られている。 「じゃあドイツ人って、なににお金使うの?」 世界で3番目にドイツ人がお金をつかっているもの 答えは、旅行だ。 ドイツ人は「ケチ」と言われがちだが、実は旅行にたくさんお金を使うひとびとである。UNWTO(国連世界観光機関)による2017年の統計では、国際観光支出は1位中国、2位米国、3位がまさかのドイツ。「爆買い」と呼ばれる中国人の観光スタイルや、ケタ違いの金持ちがいるアメリカはなんとなく想像できるが、「ケチ」と言われるドイツ人が3位なのだ。しかも「人口1人あたり観光支出」を見ると、中国は186ドル、アメリカは382ドルだが、ドイツは964ドル。 観光庁による「訪日外国人の消費傾向」を見てみると、観光・レジャー目的で来日したドイツ人の56.6%、半数以上が、14日以上日本に滞在していることがわかる。しかも同行者は、「自分ひとり」が34%とトップ。ひとりで日本に半月以上もいるらしい。 ちなみにドイツ人の旅行中の消費額の構成比は、45%が宿泊代でトップ。ドイツ人はどうやら、宿泊先に結構こだわるみたいだ。 たしかに半月以上も同じ国にいることを考えれば、毎日毎日朝から晩まで出歩くことはないだろう。ときには昼まで寝ていたり、朝散歩して昼はホテルで休んで夜飲みに行ったりもする。だから、快適な宿泊先を選びたくなる気持ちもわかる(英国やフランス、イタリア、アメリカ、カナダからの訪日観光客も総消費額の四割以上が宿泊代で、アジア諸国の場合、宿泊代の割合は3割前後が多い)。 京都旅行で1時間鴨川を眺める わたしは生まれも育ちも日本だから、「せっかく旅行に来たならいろんなところに行きたい」「効率よく観光地を回りたい」と思う。旅館ならともかく、ホテルなんて寝に帰るだけなんだから、そんなにいいところじゃなくてもいい派だ。しかしそういうテンションでドイツ人と旅行すると、意識のちがいを感じることになる。 日本に来たドイツ人の友人に対し「あれもこれも案内したい!」と張り切っても、決まって「まぁまぁのんびりしようよ」と言われるのだ。まったりしたがるドイツ人に対し、「時間がもったいないよ〜!」とワナワナする。 半年ほど前、彼と日本に一時帰国した際に訪れた京都では、「お寺はさっき見たから休もう」と彼は小1時間まったりと鴨川を見ていた。いや、嵐山には見所がたくさんあるから! 歩こうよ! と思うのだが、「旅行中は疲れたくない」とのこと。 ドイツ人の女友達とベルリン旅行したときもそう。「休憩」と言って、彼女は瓶ビールを買って国会議事堂の芝生の前に腰を下ろした。そんなのいつでもどこでもできるのに! と思うが、彼女は「せっかくの旅行だからイライラしたらもったいないよ!」と笑顔で言うのである。 この「もったいない」の感覚のちがいは、いまだにちょっと慣れない。家族や日本人の友人と詰め込み旅行をしたほうが、疲れはするが「旅行している」感があるのだ。 大切なのは「ストレスを貯めない」こと ドイツではこのせわしない「日本式旅行」は、日本いじりの定番のひとつ。たった数日間の旅行で観光地を飛び回って写真を撮り、職場のお土産を買って帰り、翌日からふたたび仕事をする姿は、ふしぎに映るらしい。ドイツ的な考えからすると、弾丸旅行や弾丸ツアーは「ストレスをために行くもの」なのだろう。 もしかしたら日本人は、旅行ですら「新しいものを手に入れてすぐに消費する」対象なのかもしれない。見て、買って、食べて、写真に収めて、お土産を抱えて帰る。じっくりとその国の文化を観察するとか、なぜ世界遺産に認められたかを調べるとか、そういうのはそんなに重要じゃない。現地でたくさんのイベントを「こなす」ことが「充実」。のんびりまったりすると、「もったいない」。 ドイツ人は、旅行でむしろ「充電」する。朝はまったりと身支度をし、公園のベンチで休み、現地の人が行く穴場レストランでワイン片手に2時間のランチを楽しみ、ホテルで休憩し、夜はまたどこかでのんびりと食事。ストレスを溜めることが「もったいない」。 わたしみたいに、時間を気にしてカリカリしながら移動したり、足が棒のようになるまで歩き回ってホテルのベッドに倒れこんだりはしないのだ。いや、する人もいるのかもしれないけれど、少数派だろう。 旅行中はとにかくストレスを溜めないことが重要で、快適さとリフレッシュのためにお金を使う。そしてふだんは、モノをひたすら使い続け、余計な消費はせずに貯めておく。 新しいものを消費するのは楽しいし、せっかくの旅行ならいろいろ見たいと思う。でもドイツ人みたいに、モノを大切にして、ゆったりと充実した時間のためにお金を使うのも、それはそれで結構心地いいのかもしれない。”

物を買わないドイツ人が日本人よりもお金をたくさん使っているもの(雨宮 紫苑) | FRaU(フラウ) | 講談社(1/3) (via conveniitekuru)