“ コンクリートの話を久し振りに少し書きましょう。知らない人が増えたかと思いますが、森博嗣はコンクリート工学の研究者だったのですよ。
コンクリートは、練ったあと、型に流し入れて(「打ち込む」といいます)、その形で固まらせるわけですが、このときは「水和反応」という化学反応で固まるのであって、水が蒸発して固まるわけではありません。むしろ水は硬化に必須の物質なので、完全に固まるまでは乾燥させないことが大切です。コンクリートブロックなどの製品であれば、型枠から外したあとは、プールの中に沈めて硬化させます。また、川や海などの水中で打つコンクリートもあります。水の中で型枠に入れるのです。
コンクリートの実験室には、養生槽という水槽があって、銭湯のお風呂くらいの大きさですが、作ったコンクリート試験体をその中に沈めておきます。セメントと水を混ぜたものは強アルカリですから、養生槽もアルカリ性になりますが、そこに学生たちは短パンで入って作業をすることもありました。
強酸だったら火傷をしますが、強アルカリの場合は、ちょっと肌がすべすべになる程度で、どうってことはありません。豊洲でしたか、地下に溜まっている水が強アルカリだったと報道されましたけれど、コンクリートの基礎が新しかっただけのことではないでしょうか。練っているときに飛沫が目に入ることもありますが、水でよく洗えば大丈夫です。でも、飲んだら駄目でしょうね。
コンクリートは固まってもしばらくはアルカリ性です。このおかげで内部の鉄筋が錆びません。鉄をアルカリ性で保護しているのです。空気に触れている表面から、しだいに中性化してきます。建築だったら、コンクリートの表面から鉄筋までの距離を「かぶり」と呼んで、これが正しく確保されていることが、その構造物の耐久性を決めます。現場打ちでは、通常かぶりは4cmですが、この4cmが、中性化が60年かかる距離なのです。60年すると、内部の鉄筋が錆びて構造物としての寿命となります。
ちなみに、「打つ」「打ち込む」「打設」というのは日本語で、英語では「cast」です。昔は、コンクリートを型枠に入れて、上から棒や木槌などで叩いたからだといわれていますが、定かではありません。”
- 店主の雑駁: コンクリートの話 (via dontrblgme404)