“先ほど、ATOK月額版を解約し、家中のすべてのPCからアンインストールした。機能や価格に不満があったわけではない。「ATOKの変換辞書の語彙には、いわゆる不快語・表現などに関する語彙が収録されていない」という事実を知ったためだ。WikipediaのATOKの項(http://ja.wikipedia.org/wiki/ATOK)にあるように、小人(こびと)や陰唇(いんしん)、あるいは思いつく限りの差別表現を変換してみればその事実はすぐに確認できると思う。(「陰唇」が不快語・表現にあたるのかは大いに疑問だが)私はこれまで随分と長い期間ATOKを利用してきたが、変換過程にそのような規制がかけられている、ということには全く気づかなかった。つまり、私はそのような規制からなんの実害も受けていない、少なくとも意識するレベルではなかった、ということだ。ではなぜ、ATOKを解約する必要があったのか。それは、自分の求めていないものを、他人の思想に基づいて利用させられることに我慢がならなかったからである。この件に関する、ジャストシステム側の見解が「変換辞書をめぐるFAQ」に記載されている。(http://www.justsystems.com/jp/tech/atok/dic/faq/03.html)社会のあるべき人権意識に立脚し、現時点では、原則として(筆者注:他人を不快にさせるような印象を持つことばを)収録しない方針を採用しています。そしてこの方針には、ジャストシステムの企業としての理念が深く関わっているようである。(http://www.justsystems.com/jp/tech/atok/dic/faq/03.html)現在なお差別や偏見が絶えないという厳しい社会的状況を考慮するとき、私たちとしてもその解消のために努めることを使命と考えるものです。私たちはかねがね良識ある社会の価値観を形成し、共有することこそが急務と考えています。ジャストシステムがどのような企業理念を持つか、というのはあくまで彼らの自由であり、上記の理念について反対するつもりは全くない。むしろ積極的に応援したい理念だと考えている。しかし私には、変換候補から不快な言葉や差別用語を隠すことが、これらの理念を実現することにつながるとは思えない。私は、自分のうちこんだローマ字を漢字に変換するためにATOKを購入したのであり、「よのなかをただしくするため」ではない。彼らがこのような見解に至ったのは、そうしたことば(筆者注:他人を不快にさせるような印象を持つことば)を変換辞書に収録することにより、故意ではなくても無意識のうちに、あるいは誤変換の形で文書中に挿入されてしまう、という可能性がでてきます。そのような場合、たとえ本人にその気がなくても、結果的にあることばが他者に対し不快感を与えたり、また思わぬところで、差別意識を助長する結果にならない、とは誰にも保証できません。との理由によるものらしい。(http://www.justsystems.com/jp/tech/atok/dic/faq/03.html)屁理屈をこねるなら、こうして差別用語を目に触れないように隠すことが、逆に差別意識を助長する結果にならない、とも保証できないのではないだろうか。ともあれ、こういう善意の押し売りはもううんざりだ。良くない物を隠せば全てが解決するのか。否。良いものとそうでないものを知ったうえで、自分の考える良いものを選択していくことこそが道徳であり、そして人間的な成長だと私は考える。そしてそれこそが解決に繋がってゆくのだと。・・・思えば長い付き合いだった。父がどこからかもらってきた一太郎Ver.1で出会ったのだから、かれこれ20年くらいになるはずだ。それ以来ほぼ毎回新しいバージョンを購入したし、最近も月額版を導入したばかりだった。PC用だけではなく、Palm用やAndroid用も導入した。卒論を書くときにも使ったし、就職活動用の履歴書や会社の資料やプレゼンテーション原稿も書いた。友達や彼女へのメールも、オンラインゲームのチャットもそうだ。ノートPCに入れて、いろんな国で使った。嬉しいことも悲しいこともたくさん書いた。自分がPCを使い続ける限り、いや日本語をデジタル的に利用し続ける限り、ATOKを利用していくのだと思っていた。パートナーだったのだ。だからこそ、その機能に、根拠に欠ける倫理観のバイアスを掛けられていることが我慢出来ない。さようならATOK。もう君と一緒に文章をつづることはない。”— 20年来のパートナーとの別れ (via petapeta)