“由井寅子氏は著書『ホメオパシー的妊娠と出産』の中で流産を経験した女性とのやり取りについて以下のように語っている。 あるお母さんがステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)のコルチゾン(一般名:強力レスタミンコーチゾン)をとり続けていました。この方はアトピーのためにステロイド剤をずっと使っていたのです。それで、妊娠7週目で子どもが流れてしまった。当然、そのお母さんはおんおん泣きました。 でも私は、彼女に「よかったね」といったのです。「全部とは言わないけど、子どもさんがあなたのステロイドの毒を食べてくれて流れたのだろう」と。胎盤は栄養だけでなくあらゆる母体の毒を吸い上げてしまうのです。幸いに、2年後にまた子どもができました。よかったですね。 (引用元:由井寅子著『ホメオパシー的妊娠と出産16ページ、強調は引用者による。) まず、「それで」などという言葉を使って、「あるお母さん」の流産の原因が彼女が使用していたステロイド剤にあるかのように書かれているが、そんな証拠はどこにもない*1。 また、言うまでもないことだが、由井氏が主張するような”胎児が母体のステロイドの毒を食べてくれる”などという考えにも、何の裏付けも存在しない。ましてや、「あらゆる母体の毒」などと大風呂敷を広げられる自信がどこから沸き上がってくるのか分からない。 ここで仮に、あまりに現実離れしていることは重々承知しつつも、ここまでの由井氏の主張を全面的に認めて、流産がステロイド剤によって引き起こされ、胎児は母体から「ステロイドの毒」を吸収して体外に排出して”くれた”ものとしよう。だが、そうだとしても由井氏の言葉は到底許容できるものではない。お母さんの立場になって考えれば、自身のアトピーの治療によって生じた「ステロイドの 毒」のせいで大事な赤ちゃんを死なせてしまったばかりか、その死は毒の排出という意味であたかも自分のためであったかのように意味付けされてしまったの だ。感じ方は人それぞれだろうが、私なら自分の為に赤ちゃんを犠牲にしてしったのだと、耐え難い自責の念に苛まれると思う。流産の悲しみでおんおん泣いて いるお母さんに由井氏はこんな無責任で無思慮で無神経な言葉を言い放ったのだ。*2 私は記述を読んだとき呆れかえってしまい、しばらくの間、この本をこれ以上読み進めることができなくなってしまった。しかし、本書を通読した後には、この記述がホメオパシーの問題を端的に表した内容だと理解するに至った。根拠なしに通常医療の処置が有害だと決めつけた上で、”善意”の形式をとった言葉によって人間を追い詰み、最終的にはホメオパシーへの盲信に仕向ける。これはこの本の各所に見られる手法であるのと同時に、本の外で現実にホメオパシー信奉者たちが、意識的にせよ無意識的にせよ、信奉者を増やすために使っている常套手段でもある。例えば、「ステロイド剤」が「子どもの予防接種」に変われば、「流産」が「子どもの自閉症」に置き換わり、やはり「あなたの子どものため」という”善意”に基づいて、ホメオパシーとセットの医療ネグレクトという歓迎せざる結果に誘導することになる。”— 流産した女性に日本ホメオパシー医学協会会長の由井氏が掛けた信じがたい言葉 - Not so open-minded that our brains drop out. (via darylfranz)