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“――ご自身が体験した不思議なお話はありますか? 三木 (大学時代に)埼玉の熊谷で2年ほど修行をしていまして。日蓮宗の場合、4年間寮に入って修行をするのですが、毎日、朝起きたら水をかぶるんです。それに、1年生の時は先輩がおられるので、(先輩の)水をかぶる分の用意も全部しなくちゃいけなかったんです。当番にあたると朝4時半とかに起きなくちゃいけないんですよ。 水をかぶって掃除と読経をして、洗い物をして、食事を作ったりもしていて。大学にも通って、大学の授業が終わると今度は夜のおつとめがあって、その後はだいたい22時45分まで夜の課業というのがあるんです。法要の勉強だったり、書道などをして寝るという生活がずっと続きますので、結構ストレスになるんですね。なかには円形脱毛症ができる人がいたり。 そんななかで唯一私が安らげるのが、近くにあったアラスカン・マラミュートという犬を飼っていたところで。そこへ行ってワンちゃんを触らせてもらって、ストレス解消になったなと思ったら寮に戻っていたんです。 あるとき、使い捨てカメラを持ってそのワンちゃんを撮っていたんですね。そうすると、「何勝手に撮ってるんだ!」って怒られまして。「誰ですか?」って聞いたら、そこの社長さんで。「すみません、勝手に撮ったらあかんってわかりませんでした。カメラこのままお渡ししますので、これで許してください」と言ったら、「あれ? お前さっきから関西弁で喋ってんの?」と言われて、「そうです」と。 その社長さんも「実は俺も関西出身やねん。ちょっとコーヒーでも飲んでいけよ」と言われて。丸太小屋みたいなところに事務所があるんですけど、そこに入って「お前、関西のどこや?」と聞かれて「京都なんです」と言うと、「俺も京都やねん」と。「京都のどこですか?」と聞くと、「“カラスマル”のところ」って言うから、「ん? “カラスマル”ってどこですか?」って聞いたら、「“カラスマル”お前知らんのか?」って言われて。「ごめんなさい、“烏丸(カラスマ)”のことですか?」って聞いたら「そうそうそう」みたいな話になったんですよ。「烏丸近辺にお住まいなんですね、へぇ」っていう話をして。 そんな話をしながら缶コーヒー並べて、「どれか好きなのを飲め」って言われて。1本いただきながら、「ここでアルバイトせぇへんか? 15分犬の散歩行ったら15万円あげる」と言われたんですよ。「15分の犬の散歩が終わったあと、俺と関西弁でいろんな話をしよう。関西弁が久しぶりやから」みたいな話をされるんですよ。「わかりました、じゃあちょっと1回寮に戻って寮の先生に聞いてみます」ということで、戻って寮の先生に聞くと、めちゃくちゃ怒られまして(笑)。「欲を捨てるためにお坊さんを頑張ってるのに、お前はそんな楽してお金儲けるとは何事や」って言われて。当時、反省文を原稿用紙4枚くらい書いて、“私は危うく欲にやられところでした”みたいなことをみんなの前で読みましたね。 それで次の日に(社長に)謝りに行ったんですよ。「すみません、バイトはできません」と。そしたら「あぁ、そらそうか、お前お坊さんの修行してたんか。わかった、もう仕方がないから頑張れよ」みたいな。そこでもまた缶コーヒー出してくれはるんですよ。そしてコーヒーを飲みながら関西弁で会話をして。それで「ありがとうございました。失礼します」ということで帰ったんですね。 熊谷の修行は2年間で、残りの2年は、東京の谷中に寮がまた別にあるんですけど、そこに引っ越すので、また(社長に)挨拶に行ったんですよ。すると、「おお、入れ入れ、コーヒー飲め飲め」と言って、また(缶コーヒーを)何本か並べてくださって。1本いただきながら、「実はもうこれで熊谷の修行が終わります。次はまた新たに2年間、谷中というところに修行に行きますんで」と言うと、「あぁ、そうかそうか。ほんならまたどっかでお前と会えたらええなぁ」と。「じゃあ失礼します」と言ったら、「おう、ちょっと待て待て。もう1本飲んでいけ」って言わはるんですよ。私はもうお腹いっぱいだったので、「いやもう大丈夫です。またじゃあどこかでお会いできたら良いですね」と言って、そのまま帰ったんですね。 その後、谷中で2年間修行して、京都へ戻ってきたぐらいに、たまたまテレビをつけたら“愛犬家連続殺人事件”という事件がニュースで流れていて、犯人を見たらその人なんですよ。「あれ? これ私が行ってたペットショップ屋さんの社長だ。あの人そんな殺人をする人だったんだな」と思っていたんです。 「埼玉愛犬家連続殺人事件」 1993年、埼玉県熊谷市で愛犬家ら男女4人が殺害された連続殺人事件。 殺人や死体損壊・遺棄の容疑でペットショップを経営する男とその妻が逮捕された。 それから何年もしてから(事件の)裁判が終わったくらいに、とある男性が来られまして。「実は愛犬家連続殺人事件の犯人といろいろとやり取りをしています」と。その方は犯人に実際に会いに行かれたそうなんですね。 犯人に話を聞くと、「俺もっと殺してんねん。殺すには条件がいくつかあって、お金がらみの殺人じゃないとか、完全にこの世から消してしまうとか。最後に運の悪い奴を俺は殺すっていうふうに決めていた。でも1人だけもしかしたら神や仏に守られてるような奴がいるかもしれん」と言ったそうなんです。ついついその方が「神や仏の存在信じてるんですか?」と聞いたら、「俺は信じてる」って言うんですよ。あれだけ人を殺しておいて。 理由を聞くと、「昔、修行僧がうちへ遊びに来た。その時にいくつかの毒入りの缶コーヒーと1個だけ毒の入ってない缶コーヒーを置いてどれか好きなのを飲めって言ったら、そいつは3回とも毒なしを引いて元気に帰っていった。最後にもう一度試そうと思って、もう1つ飲めと勧めたら、お腹いっぱいなんで結構ですと帰っていった。もしかすると、あいつは本当に神や仏に守られてるのかもしれんと思った」と話したそうです。 「そんな人知りませんか?」と、いろんなお坊さんにあたった結果、私のところへ来られて。「それって三木さんじゃないですか?」と言われて、「私です」と。神や仏に守っていただいてるなっていうお話でございます。”
— 「コーヒーでも飲んでいけ」“埼玉愛犬家連続殺人事件”の犯人に殺されかけた…和尚はなぜ助かったのか